高橋源一郎『日本文学盛衰史』 読書しつつ感想しつつ(28) -----ネタバレあり。注意。 本当はもっと怖い『半日』 『日本文学盛衰史』における森鴎外は、これまで、 啄木から眺められた第三者としてのみ登場していたと思うが、 この幕間的な挿話では、一時的に弾ける。 しかしまだ、 時空の捩れに「こめかみをおさえつつ」翻弄される側であり、 せいぜいツッコミ役だ。 大蔵大臣ヨーダほどキャラ立ちはしていない。 オーガイ・モリが、偉大なボケ役として喝采をあびるのは、 「官能小説家」まで待たねばならない。 ◆
鴎外は、テレビを前にした妻と母と自身の会話について、
「・・・・森さんのところは、家族の間で会話が絶えない理想の家だと聞いてたんだけどなあ」そういうのを小説っていうんじゃないか、 という気がしたりもする。
「ぼくの考えではね、あんたは、なにかものすごいものを期待してるんじゃないかな。会話とか家族とか、そういうのに弱いんじゃないの?」やっぱりまるで小説への期待だ。
2001.6.17 |