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高橋源一郎『日本文学盛衰史』
読書しつつ感想しつつ(24)
 普請中
-----ネタバレあり。注意。

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されどわれらが日々2

「あの人」に導かれ、
詩人の春を過ごした島崎藤村。
しかし今はもう
「あの人」が死んで早や50年。

日本は戦時下にあり、
藤村は「12月8日」の感想を求められたりする。
またまた明治と昭和が交錯したかと思いきや、
藤村は、本当に開戦の時代まで生き、
日本文学報国会の名誉会員になったりしたのだ。
つまり藤村は、私と同じ20世紀をしっかり生きた!
これは驚きだった。

今は老人となった藤村の前に、
「ひどく背の高い、
 グレーのレインコートをはおった、
 痩せこけた美青年」が現れる。

藤村が若かりしころに書いた?詩を
青年が暗唱する。
その詩「賛詩語録」(3456?)は、素晴らしい。
現代詩に詳しい人ならきっともっと面白いのだろう、
と現代詩に詳しくない人にも匂わせて、素晴らしい。
それと、
この痩せこけた長身の青年とは誰のことだろう。
現代詩に詳しい人は気がつくのだろうか?

青年と藤村老人の会話は続く。

「先生がいらした一九一四年のパリの夏も、酒は苦かったのですか?」

『新修国語総覧』を見ると、
この年、藤村は
「姪こま子との不倫事件からフランスへ去る」とある。
その事件を「大胆に暴露した告白小説」が
『新生』だ。

そんなことを
胸の痛みとともに回想しながら、
藤村は自問する。

 わたしは半世紀を遥かに超えて書き続けてきました。わたしはわたしという井戸を掘り続けてきたのです。それがどれほど貧しい井戸なのか、わたしは誰よりもよく知っています。この井戸はとうに涸れ果てているのかもしれません。あるいは、この井戸からはもとより飲むに適せぬ、濁り水しか掬えぬのかもしれません。仮にそれが泥水だったとしても、わたしにはこの井戸以外から汲むことはできなかったのです。

 (略)

 わたしは十分に書きました。そう断言しながら、なおわたしは、解決することのできない不思議な思いにとらわれるのです。
 あの、胸の奥で、燃え残っているなにか。そのことについて、どう書けばいいのかわたしにはわからぬなにか。いったい、それはなんだろうと。

う〜ん、まったく、それはいったい何だろう?
答えは出るのか、この章で、この本で。

すると、ある男が、
藤村だか青年だか
高橋源一郎だか谷川俊太郎だか穂村弘だか
はっきりしないある男が、
その晩遅く、ワープロで、
その答えなのかどうかはっきりしない、
一つの詩を書いた。


Junky
2001.6.14


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