(18) (20) インデックス
ピンは、 花袋が書いたという 『「生」における試み』を取り上げて言う。
「とにかくね、あんたは、繰り返し、あるがままを見ろといってるわけ」 「どうもそうらしい」 「で、自然主義の作家って、みんなあんたの真似をしてるわけだろ」 「その可能性は高いね」 「じゃあ、みんな小説なんか書かずに、ビデオでも撮ればいいじゃん」
しかし、あまりはっきりしないまま、 『蒲団』をめぐる一連の展開は、 この章で終わってしまうのだ。
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途中こんな場面がある。
内心でつぶやいたはずのピンの言葉に、 花袋が反応して返事をしたかにみえた。 もしやテレパシーでは? ピンは驚くが、 どうやら、花袋の無意味なひとり事にすぎなかったようだ。
自然主義小説では、 自分の内面から他人の内心まで、 きちんと観察し描写しているかのようだが、 これは単なる錯覚であって、 作家はただひとり事を述べているだけだ。
そんなふうに取れなくもない。