言いたいことがあるのかないのかという問いをちょっと横に置いておいて、今度は言いたいことが伝わるのかどうかを考えます。なにかを伝えることこそ表現だとすれば、そのなにかが伝わらなかった場合、表現はまったくの無駄になってしまいます。
さて、伝えたかったなにかはきちんと伝わるのでしょうか。
これには僕はいいえと答えるしかありません。
実際、せっかく書いたのに読む人がちっとも分かってくれなくて、そんな経験がなにより語っています。あるいはもっと原理的に考えても、やはり伝えたいことは伝わらないというのが表現と伝達の宿命です。
その理由は、伝達というものが最終的には言葉の媒介を得ないと成り立たないからです。そして、言葉とは常に意味がずれていくものであることを、僕たちはもういやというほど知っています。それなら言葉を越えて伝えることさえできれば、と願いを掛けたいところです。しかしそれは無理な話です。言葉以外の媒介は存在しません。