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高橋源一郎『日本文学盛衰史』
読書しつつ感想しつつ(31)
 普請中
-----ネタバレあり。注意。

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WHO IS K ? 3

夏目漱石『こころ』をめぐるミステリー、
小説サイドがずっと続く。

銀座の裏通りを啄木が歩いていると、
一人の老紳士が太めのステッキを突きながら現れ、
忽然と消えた。
はてこれはまた、このミステリー自体の伏線か?
では、どこに繋がる?

午後5時。新橋にある日本麦酒のビヤホール。
啄木がやってくる。漱石の姿はすでにある。
胃カタールの漱石が、ビールを飲んで顔をしかめている。
今は亡き二葉亭について二人の会話が始まった。

いったいいつどんな犯罪が行われるのだろう。

謎を謎のままにしておく、永遠に解けぬ謎として保ついちばん有効な方法は何だろう。それは万人の前に晒すことである。漱石は職業的作家の本能として、そのことを熟知していた。(略)漱石は、新聞小説というメディアを選んだ時から、真の作家になった。彼は自らの謎を隠す場所を見つけたのである。(「WHO IS K ? 1」より)

・・・・ということは、
さては高橋源一郎も「官能小説家」に何か隠したな!
ていうか、あの小説は、むしろ秘密バレバレだと思うが・・・・
いや、みんなが明らかに気づいてしまう秘密に紛れて、
つい見落としがちな意外な犯人・意外な真相が、
堂々と隠されている、なんてことはないのだろうか。
「官能小説家」に、あるいは、この「WHO IS K ?」に。

しかし、謎といったらもう
高橋源一郎の小説はいつも謎だらけだ。
どれが何の暗示で、何の伏線やら、
あるいは冗談にすぎないのか、
わからぬことばかり。
あの作品の、あの章の、
気になるあの言葉やこの人物。
文学の莫大な埋蔵金が埋められているようであり、
恐ろしく深い落とし穴が仕掛けられているようであり。


Junky
2001.6.17


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