田山花袋の小説『蒲団』が、
AV『蒲団'98・女子大生の生本番』に化ける。
この文学実験というか、ネタというか、
まことに出色のアイディアだ。
自然主義文学が苦悩して目指した境地を、
アダルトビデオという極点から照らし返すこと。
『蒲団』の話の隠微さと、
田山花袋の顔写真が醸す親父キャラは、
まさにこうした出番をじっと待っていたかのようで。
『蒲団』とポルノの、
こうも見事な連結ぶりが実現してしまうと、
そんなの誰だって思い付いたんじゃないかと
コロンブスの卵を主張したくもなる。
しかし実際は、やはり、
古くは『ジョン・レノン対火星人』、
新しくは『あ・だ・る・と』と、
ポルノ描写の極北に挑み、
AV監督も自ら体験した作家にして可能な
業(わざ)というか、業(ごう)というか、
そういう世界。それが、
『日本文学盛衰史』中盤の柱として、
これからつごう8章にわたって繰り広げられる。
登場してきたのは、
AV監督のピンに、男優のツボウチ。
『あ・だ・る・と』でおなじみの二人だ。
この小説には、
近代文学の作家や作中人物がいろいろ出るが、
高源文学自身からも早々と借り出されたわけだ。
◆
さて『蒲団』。
名前だけは有名なくせに、
どうせ読まれてなさそうなところも、
起用のポイントだったようだ。
「いいかもなあ。確か、作家が自分のところの女の弟子に手を出しちゃう話だよね」
「ええ」
「それで、その女子大生の弟子は作家と夜な夜なセックスするんだよねえ、確か」
「ええ」
「『蒲団』ねえ。いいんじゃないか。作家が女子大生をレイプするやつな」
「へえ、『蒲団』ですか。あれって、匂いフェチの作家が女子大生の寝た蒲団の匂いを嗅ぎながらオナニーする話でしたよね」
ピンが、
自分が生きている間に会えるとは思っていなかったところの、
『蒲団』を実際に読んだ人間もいたというが。
「それで3Pやるわけ?」
「うん。それどころか、助手の子と奥さんがレズったりするのよね」
「レズもありねえ」
◆
さてどうなることやら。