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だらだら話 23

  1年ぶり篇(呼吸のこととタイのお茶農家)

 今自分で第22話を読んでみて、ああもう1年経ったんだと驚いているところです。昨年1年は私にとって大変な年でした。でも何とか心身ともに(70パーセントくらい)取り戻せたようです。まだもう少しイケそうですので、またよろしくお願いします。
 インドにも2年ぶりで行ってきました。そこで学んだことからお話したいと思います。

 もう御存知でしょうが、インドに行くのはヨガのグルーのナンディ先生のところで、少しずつヨガに関して教わってくるのが目的です。先生はヨガのお医者様で毎日たくさんの患者さんを診ていらっしゃいます。研究熱心な方ですので、行くたびに処方の方法が変わっていることがあります。今回、2年ぶりに行って大きく変わったなと思うのは、呼吸法に関してです。

 私が心身ともに取り戻せたと書きましたが、今度インドから帰ってからの回復が特に著しいのです。やはり今度の新しい呼吸法のせいかなとも思われます。

 これに関しては、先生は絶対的に自信を持たれています。
 大きく変わったといっても、簡単なことですし、聞いてみればなるほどそうだよねと頷づけることです。でも今までこんなことを書いたものを読んだことがありませんし、なんで誰もこれを言わなかったのかしらと、不思議になるくらいなのですが、こんなのを「コロンブスの卵」とでもいうのでしょうか?

 ヨガの呼吸法の欠かせない要素にクンバカがあります。止息のことです。息を吸った後で、しばらく止めてまた吐くのです。今度の新しい方法では、これを1セットしたら、必ずそこで休みをたっぷり入れます。

 止息はもともと不自然なのもですから、私は今までのレッスンでは、「無理なほど止めないでください。苦しくなる前に吐いてください」と、煩く言ってきました。でも1回ごとに休憩をたっぷり入れれば、少々苦しいほど我慢してやっても構わないわけです。
 みなさんもやってみてください。兎に角、たっぷり休みを入れながらやってください。きっと気持ちがいいし、やったあとすっきりして、元気がみなぎる感じがするはずです。それに、休みながらするのなら、かなり難しい呼吸法をしても大丈夫ということでしょうから、独学している方、是非お薦めします。
 何度も言いますが、休憩はゆっくり取ってください。ご参考までに言いますと、ナンディ先生の場合、止息の時間が長いので、休憩も凄く長いです。一度計ってみましたら、休憩が45秒でした。

 ヨガは独学してはいけないとよく言われます。私は、これは呼吸法に関してだろうと思います。アサナも無理をしてはいけませんが、アサナで無理をするより呼吸で無理をする方がずっとダメージが大きいからです。こういう面からも、呼吸法はゆっくり休みながらなさることをお薦めします。

 ナンディ先生は、毎日患者さん診ていらして、臨床経験が非常に豊富です。その先生が、「いいことをみつけたよ! この方法にしてから、患者の回復度がぐっとアップしたんだよ」と大騒ぎなさっているのです。まるで、凄いおもちゃを貰った子供のようです。(ちなみに、先生は子供のように可愛い人です。今回一緒に行った若い人が、意外、意外と驚いていました。)これを見ると、私のように未熟なものは、もう従うより仕方がありませんし、またやってみて、そうだろうという気がするのです。是非ためしてみてください。

 呼吸法のことを、プラナヤムと言います。プラナは宇宙エネルギーを指し、ヤム(またはヤマ)は、コントロールを指します。呼吸によって、宇宙エネルギーを自分のなかに取り込み、それを自分の中でコントロールするということでしょうか。ですから、呼吸法なんて言葉で片付けられるような生易しいものではないのですが、適切な訳語が無いので、これで済ませているようです。

 プラナヤムには止息が欠かせません。いろんな呼吸法がありますが、止息を含まないものは、プラナヤムとは呼びません。サハジプラナヤムという呼び方もあります。サハジとは易しいということです。プラナヤムのウォーミングアップ的な要素も強いのでしょう。プラナヤムをなさる前に、ちょっとサハジをなさるといいでしょう。御存知ない方は、ゆっくりとした腹式呼吸だけでも結構です。

 今回は、呼吸法のことを書き始めたついでに、サハジプラナヤムから始めて、やり方をご紹介しましょうか。
 その前に、ゆっくり呼吸するということが欠かせません。まず、ご自分がどのくらいの速度で呼吸しているか調べてみてください。まず吸う息から。吸う息と吐く息では、吐く息の方が大切なのですが、吐くためには、先ず吸わなければなりません。私のクラスにいらっしゃる新入生には、吸う息が非常に少なくて、よくこれで生きていると思えるような方もいらっしゃいます。
 まず、吸う息に3秒くらいはかけてやってください。それが無理なら、先ず2秒から始めて、次に2秒吸って2秒吐く。それに慣れたら今度は、2秒吸った後で1秒止めてから吐くというのを練習してください。まもなく、3秒で吸うが平気になるでしょう。

 それが身についたら、吐く息です。吐く息にはたっぷり時間をとってください。
 3秒で吸って、その後ゆっくり吐くというのが基本で、これが自然に出来て初めて、いろんな呼吸法が出来るのです。
 ここで、吐く息をゆっくり長くする練習をしましょう。
 先ず、ひとつの方法は、吐く時、口を尖らせてフーと静かに吹くのです。口は力を入れてしっかっりとがらせてください。声は出さなくていいから、フーと言うつもりで吐きます。吐きますと書きましたが、音がするように吐くのでは、長く続けられません。少しずつ惜しみながら出すという感じにして下さい。音を出さないように。

 もうひとつの方法。2本の指を左右の鼻梁に置きます。抑えるのではなくて、軽く置くだけです。そして息を鼻から出します。上記の方法のフーの練習をした後でこれをなさる方がいいと思います。

 次に腹式呼吸です。腹式は難しいと言う方がありますが、そういう方は、お腹に息吸わなければと思っていらっしゃいませんか? お腹に吸うのではなく、お腹から息を追い出すのです。

 初めは手を使ってやりましょう。1回普通に吸った後で、下腹を押してください。お腹の容積が小さくなるので、自然に息が追い出されます。つぎにその手を緩めると、空気が自然に入ってきます。その息の量だけで充分です。なるべく自分で呼吸しようと思わないで、お腹の出入りに任せてください。これは簡単に出来る人と中々難しい人とがありますので、難しかったら焦らないことです。その内に出来るようになりますから、おぼえておいて時々トライしてみてください。

 次にサハジプラナヤムをご紹介しましょう。

[No.1]
 仰臥します。
  1 .片脚を上げる。それを下げる。
  2. もう一方の脚を上げ下げ。
  3. 両手を上げ下げ。(脚は動かさない)
 この3つの動作を繰り返します。いずれの場合も吸いながら上げて、ゆっくり吐きながら下ろします。目は閉じて丹田(下腹部の中心あたり)を眺めていてください。

[No.2]
 坐ります。両鼻から吸ってフーと吐きます。上記のものです。

[No.3]
 ゆっくり顔を上げながら吸う。吐きながら下げる。
 この繰り返しです。この時は3秒以上かけても構いませんから、ゆっくりと吸いながら、先ず胸の中の気管を意識してそれを伸ばし、次に喉をよーく伸ばし、最後に顎を上げます。今までこんなに喉を伸ばしたことはないというほど伸ばしてください。
 吐くときもゆっくり吐きながら顔を下げます。吐き終わった時、顎が胸に近づきますので、しっかり押し付けてください。一瞬喉が締め付けられるくらい。
 このNo.3は、風邪をひきかけているときなさるといいです。また、気管を丈夫にしますので、気管の弱い方お薦めします。風邪の予防にもなります。
 この呼吸法をすると、咳を誘発することがありますが、心配要りません。あくびもよく出ます。兎に角、出るものは何でも出してください。

 No.4は、アグニシャといって、独立してしまい、もうこのグループから脱出しました。あとで、別に書きます。

 呼吸のことばかりで、飽きる方もいらっしゃるでしょうから、(実は私が飽きて来たのですが)此処でがらりと話題を変えます。サハジプラナヤムの続きは必ず書きます。お約束します。そして後から、呼吸に関するものばかり集めたものも作りましょう。あり難いことに、参考にしてくださる方もいらっしゃるようですので、そういう方の便宜のために。

 今回は、インドに行く前に、タイで10日間過ごしました。タイのお茶農家を紹介して貰えたので(いつもながら、国際の川崎さんです)、居候してきました。初めてのおうちなので遠慮して、今回は10日だけにしました。友人に、「初めてで10日なんて、遠慮にならないよ」といわれましたが。大変いい家族で、居心地よくすごさせて貰い、今後毎年行きたいと思っています。

 タイの北部の国境に近いところに、メイサロンという村があります。中国の雲南省に近いところで、第2次世界大戦のあと、中国から難を避けて来た中国の人々が、国境を歩いて越えて、このあたりに落ち着かれたのが始まりです。
 中国の方は外国に行っても、自分たちの生活様式を変えないのが普通らしいですね。此処も、家のつくりからなにから、全く中国に行ったようです。それが珍しいのと、高度1000メートルで涼しいのとで、観光地兼避暑地にもなっているようです。でも静かなところです。

 食事も中国風で、テーブルが、中華レストランに行ったように丸い回転式でした。雲南省は四川省に近いので、食事の内容は四川料理だと思っていただければ結構です。ちょっと辛めですが、野菜たっぷりで、おいしかったですよ。

クリックで拡大=以下同

 お茶畑の仕事は、お茶摘みと草取りをちょっとやらせてもらいました。

 お茶畑は、日本のと変わりませんが、写真をご覧になると解るように、凄い傾斜地で、反対側の傾斜地は、焼畑になっているので、裸です。地元民のアカ族の人たちが昔から焼畑農業を営んでこられたのです。今では、中国系の方たちの方がずっと豊かですが、両民族がうまく共存して暮らしておられるように見受けられました。今丁度、焼畑の季節で、あちらでもこちらでも煙を出しているので、毎日空がうっすらと煙って見えるくらいです。
 お茶畑の仕事は楽な仕事で、一緒に働いたアカ族の労働者の人たちも、非常に親切な人々でした。言葉は通じなかったけれど、楽しく働かせて貰いました。是非また行きたいです。そのためには、今トロトロとやっているタイ語をもっと気をいれて勉強しようと決心しました。

 此処のおばあちゃんは、11人も子供を産んだ方で、苦労して雲南省からタイへ山越えをして来られたのだそうです。もう使い果たしたような、よれよれの老婆だろうと想像していましたが、とんでもない。私よりずっとシャキッとした方でした。細かい心遣いも行き届く方で、全く脱帽でした。こんな時は、せめて英語くらいにでもことばが話せればなあと残念でした。きっと素晴らしい体験談が聞けたでしょうに。

 こんなに、自分の子供が多いのに、まだ他にも他人の子供も引き取って育てていらしたそうです。
 今でも、家族じゃないらしい老人が同居しています。あの人は誰ですかと聞いたら、みんなよく解らないというのです。何時頃からかこの家に住み着いたらしいのです。そういう鷹揚なうちです。

 朝起きて降りていって、庭先で椅子に坐ると豆乳が出てきます。飲みながら、私は本を読むのです。そうすると、おばあちゃんがビーチパラソルを立てて、日陰を作ってくれます。そのパラソルが15分ごとに動くのです。あんまり申し訳ないので、ずっと日陰になっているところに陣取ることにしました。何処の馬の骨とも知れない居候に、こんなに親切にするなんて、どうしたら、人間そんなに成れるんでしょうかね。

 この写真はお店のものです。畑で取れたお茶を精製して、こうやって売っています。売っているのは、奥さんです。奥さんの妹さんのファーリンさんは、この隣で、洋品の店も出しています。さすが中国系の方たちは商売がうまいですね。
 こういうふうに、お金をせっせと稼ぐ面と、知らない人までうちにおいて面倒を見るという面が、愉快な矛盾だとおもいませんか?

 今日はこの辺で止めます。次号は1年も経たないうちに出して、呼吸のことの続きに触れましょう。

2007年6月



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〈筆〉waikari bahchan=木村詩世