戻る目次進む


だらだら話 20

  インドのヨガブーム
 今回も英語版からの逆輸入ものです。
 先日の新聞にインドでのヨガブ−ムのことが出ていました。
 先月インドに行った時に、テレビで実際にそれを見て面白く思い、そのことについて書きたいなあと思っていたのです。
 ご存知のように、ヨガはインドから来たものです。「インドでは、みんながヨガをしているのですか」と訊ねられたことも何回もあります。でもそれは全然違います。インドでのヨガの実際の普及率は、日本と殆ど変わらないのではないかと思っていたくらいです。
 ガンジ−ガ−ト(ガンジ−さんを記念する沐浴場)のほとりや公園などで、私がアサナをしているときなど、インドの人が寄ってきて、ヨガとはいいものかい?とか、どんなものか教えてくれ、とか言われて、私がインドの人に、ヨガの手ほどきをすることもあるくらいです。
 でも最近、ラムデオというス−パ−スタ−が一躍おどり出て、事情が一変しました。

 ラムデオのおかげで、インドでのヨガ人口は飛躍的に増加したのです。インド中の各地で、毎日彼のレッスンが行われます。此処で1週間、あちらで10日間というふうに。そしてそれが毎日テレビに放映されるのです。毎朝5時から7時までです。

 もし日本で「毎朝5時からヨガのレッスンをするからいらっしゃい」と言ったら、気違い扱いをされるのが関の山でしょう。でもインドは暑い国なので昼寝の習慣があり、そのせいで、朝は非常に早いのです。ですから、朝の5時からヨガに来るのもなんでもないことのようです。
ラムデオのレッスンにも、たくさんの人が参加しています。

 私がたまたまテレビで見たのは、インド−ルという新興工業都市で行われたものでしたが、6,000人以上の人が参加していました。時には10,000人以上が参加することもあるそうです。

 その他に、家庭でテレビの前で参加している人がたくさんいるわけですから、インド中でどのくらいの人がやっているかは、ちょっと想像がつかないと思います。一説には何百万人にものぼるのじゃないかと言われています。

 こんなにヨガ人口が急に増えたのは、ラムデオの大手柄といえましょう。 それにもまして、呼吸の重要性を人々に知らせた功績は大きいと思います。

 水とか空気はいつもその辺にあるので、つい、その有難さを忘れ勝ちです。同じ様に、呼吸の大切さに目を向ける人は少ないと思います。 最近はテレビなどで、呼吸の大切さが取り上げられるようにはなりましたが、それでも、具体的にどのようにしたらいいかなどの指導はまだまだ行き届いていない現状です。

 私のヨガのクラスでに新人が見えた場合も、早くて浅い呼吸をしている方が殆どです。そしてそれを直すのに暫くかかるのが普通です。一番悪い点は、いい呼吸をしていないということに、ご自身がまるで気がついていらっしゃらないことです。
 呼吸を正しくするようにして、静かにゆっくりとした呼吸がいつも出来るようになれば、それだけでも、心身両面での健康が保たれると、私は確信しています。

 ラムデオのレッスンでは呼吸法しか行われません。アサナ(ヨガのいろんなポ−ズ)も何もしないのです。ただ呼吸法だけです。それでも、それによって、いろんな病気が治っています。これが良いと知った人は友達や近所の人に、「いいよう!」と言いふらします。聞いた人たちは「どれどれ」と始めます。こうして, ラムデオのレッスンに参加する人が、日に日に増えていくのです。

 ラムデオは何故そんなに人気があるのでしょうか? ひとつには、彼が人の心を掴む話し方を力強くすることが挙げられます。殆ど「煽動家」といってもいいような話し振りです。レッスンは2時間なのですが、その間ず--っと、彼は喋りつづけます。呼吸法の合間にもずっと話しています。それがインドの人には受けているようです。

 又彼は大変易しく解りやすく、想像に訴えるような話し方をします。これも人気のひとつでしょう。
 例えば、菜食を薦めるにあたって、「鶏肉を食べる時に、鶏の悲鳴が聞こえませんか? 首を締められている鶏の悲鳴が?」また、蛙のアサナが糖尿病にいいと言う時、「皆さんは糖尿病の蛙なんて見たことがないでしょう」と。まあこんなふうです。

 ラムデオのレッスンは何故そんなに、健康にいい結果を出すのでしょうか? いくつかの理由が考えられます。
1. このレッスンは戸外で行われます。早起きして、朝のいい空気の中で2時間もヨガをする。それも、ヨガをしようという良い気を待って集まった大勢の人の中で。これだけでも、健康を促進する要素が充分揃っているとお思いになりませんか?
2. 薬を飲まないで、何かを治そうとすれば、ヨガならヨガを毎日することが不可欠です。この点で、ラムデオのレッスンが毎日放映されることが大きな効果をもたらしています。
 いずれにしても、これだけのブ−ムを巻き起こしたラムデオはたいしたものです。私はこの点、彼に脱帽いたします。

 私はインドで1985年にヨガを初めて教わりました。私のグル−(先生)のNandy先生は西ベンガルに住んでおられます。カルカッタの郊外です。この20年間、私は毎年インドに行って、ヨガを少しずつ習い足して来ました。Nady先生は評判のよいヨガドクタ−です。アサナとダイエットと呼吸法で、病気を治されるのです。このNandy先生は、ラムデオのやり方について、かなり批判的です。

 どういう点で、批判的なのか、次の号で書くことにします。皆さんが、ヨガというものを理解なさる助けの一端にきっとなってくれると思いますので。
 なるべく早く次の号を出すようにします。

2005年6月



戻る目次進む



〈筆〉waikari bahchan=木村詩世