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だらだら話 6
アサナは血液を廻すのです。
今日の本題に入る前に、ちょっとお断りしておきたい事があります。第5話の最後で、後ろに曲げる事もお忘れなくと書きました。これを訂正はしないのですが、注意を付け加えたいと思います。体の柔らかさに個人差があることはご存知でしょうが、後ろへ曲げるとなるとその差がものすごく出てくるのです。ですから、後ろへ曲げるアサナをするときは、特に気をつけて、よーく自分の体に聞いて、無理の無い程度から始めて、だんだんに慣らすようにして下さい。これは何をするときにも必要な注意ですが、後ろへ曲げるとき特に気をつけていただきたいのです。
後ろへも曲げることの大切さは、この前バランスという面でお話しました。もう一つあります。背骨は、ご存知のように、短い脊椎の連続です。一つ一つの脊椎の間には特に(後ろ側に)隙間があります。この隙間にだんだんごみが溜まってくるのです。後ろへ曲げる事によって、そのごみを押し出してやらないと、ごみが脊椎の間に住み着いてしまいます。そしてだんだん硬くなっていくのです。そうすると後ろへ曲げる事は殆ど不可能に近い事になります。こうなっては大変ですから、無理をしない程度から始めて少しずつごみ掃除、ごみ押し出しをするようにしましょう。
ヨガをしていない方も一度、ご自分の背骨をテストして見てください。初めてするときは、胸の前で腕を組んで、のどを伸ばしてあごを上げてください。くれぐれも無理をしないように、ちょっとでも辛かったらすぐに止めてください。でもこの姿勢で3分位保持するのが辛いようなら、【あなたの背骨は、ごみだらけえ!】という警鐘が鳴り始めていると考えてくださって結構です。少しずつゴミ取り作業をしていくようにして下さい。
さて、今日のお話に移りましょう。
第4話【ぎっくり腰】に対して、二通りのお返事をいただきました。
ひとつは、例えば、「私はヨガの{自分で自分を治す}と言う考え方がとても好きです。かしいざ家族から首がこるとか肩がこるといわれても 相変わらずヨガをやっている時はぼーっとしているので腰,肩回ししかいえません。 なにかまとまったものがあれば良いなといつも思っていたので是非こういうのを作り続けていっていただきたいと思っています。」というもの。もう一つは、「木村先生ももう先があまりないんだから、ハウツウものなんか書いていると、私の聞きたい「旅のはなし」とか先生の経験談とかが聞けないうちに時間切れになっちゃう。ハウツウものは本屋で探せばあるんだから、そんなものに、時間を使わないで欲しい。」
お二人とも有難いご意見で、さて私はどうしようと、迷うわけですが、どうせ、こういう風に、だらだら書いていれば、死ぬまでに、たいしたことは書けないのですから、まあ適当にやりましょう。と、この無責任さがたまらない。「たまらない」というのは、どうしようもないと言う意味ではなく、たまらなく自分で好きだということです。
さて、今日は一番無難なところで、Q.A.といきましょう。
Q.
ヨガを始めたいのですが、どの教室に入ったらいいのか迷います。なにか目安はないでしょうか?A.
難しいような易しいような質問です。ストレッチの多いヨガを探していらっしゃるのなら、日本中いたるところにあります。日本のヨガ教室は、ほとんどがそうですから。でも、なかには、ひどいのもあります。たとえば、教室の真中に冷蔵庫がおいてあって、冷たい水が、ふんだんに飲めるようにしてあるところがあります。ここでは、激しい体操のような動きの速いアサナをして、汗だくだくになったところで、その冷たい水をみんなで飲むのです。どういう意味なのか理解に苦しみます。
これは、ひどい例ですが、本当に、こういうところもあるのです。「ここの生徒さんは、これがヨガだと思っているのだろう。」と思うとゾッとします。絶対に見学して、よく見極めてから、お入りになる事です。
私のような静かなヨガを、お望みの方は、ちょっと難しいかもしれません。なにしろ少数派ですから。でも少しはあると思いますから、これも、見学して探されるしかないでしょうね。第一に、自分が何を望んでいるのか決める事です。体を動かしたいが、エアロビクスでは激しすぎるし、というのなら、ストレッチ・ ヨガがいいと思います。それ以上のものを求められるなら、やはり、静かなヨガを選んでください。
その時は、アサナの保持の長さが、先ずわかりやすい目安になります。20秒くらいで次々にアサナを変えて行くようなクラスは、体本位のクラスと思って良いでしょう。2分か3分くらいアサナの保持をして、さらに呼吸法を多少なりとも取り入れている教室なら、かなり、本格的なものが望めるとおもいます。とにかく通える範囲にある教室を、いくつか見学なさることですね。
この内容について、ちょっとご説明しましょう。ヨガの古典と言えるようなものをひもどくと、アサナの保持は快適な限り長くと、書いてあります。又、日本では、「ヨガ」イコール「アサナ」と思われているようですが、アサナはヨガのほんの一部でしかないのです。ヨガは八段階に分かれていて、アサナはその一段階にしか過ぎないのです。呼吸法がもう一つの段階を占めています。後の六つは何か、それは又改めてお話することにします。ですからアサナだけに専念している教室では、それ以上のことは望めないでしょう。
ここで以前に戴いたお返事の一部をご紹介します。
「続けて「ギックリの巻」もメールで頂きました。精神的なはたらきを科学的に裏付けするする、というヘソな部分で「おお」と惹かれましたがそんな読者をあざ笑うかのように幕切れ。カクッ。意識した構成じゃないんだろうけど、興味を引っ張ってくれます。」
ヨガに科学的な裏付けがあると言う事もあまり知られていないようですので、ここで、保持の長さを一つ例に取って見ようと思います。何故保持を長くするか。アサナの目的は筋肉などを伸ばすことだと、思われていますが、そうではなくて、血液を目的とする個所に送る事が、一番の眼目なのです。
アサナを始めるとあっちこっち引っ張ったりしますから、体中を血液が右往左往し始めます。それが落ち着いて目的の場所におとなしく収まってくれるのに約2分かかるそうです。その後から本当の効果が与えられ始めるわけですから、短い保持では、この効果は望めないわけです。ヨガでする一見わけのわからないようなことに、それぞれこういう風な説明があります。少しずつお話して行くしか無いと思います。
保持の長さのことでは、思い出す事があります。前にお話したシバナンダ・アシュラムでのことです。ここでは、アサナのクラスがあることはあるのですが、いまいち物足りない物でした。もっと難しいお話に重点がおかれているようでした。それに、アサナのクラスでは、保持がかなり短いのです。そこで、私は又スワミのところへ押しかけて行きました。そして、ヨガの本場でありながら、何で保持が短いんですか?とくってかかったのです。えらい人に文句を言う時は、英語の方が便利ですね。何しろ敬語が無いのですから。
スワミ曰く「あんたの言う事はもっともじゃ。しかし、ここには世界中からいろんな人が来て、まったくの初心者も多いので、あの程度にしておくんだよ。」
初心者でもいいじゃないかと思いましたが、まあ、あまりしつこく文句をいってもと言う日本人かたぎが頭をもたげて、おとなしく引き下がってきました。しかし、このスワミも、本来は、保持は長くあるべきものだ、と、ちやんと認めておられました。
ところで、さっき冷蔵庫のあるヨガ教室の話をしました。これは、特にひどい例ですが、ここで、皆さんに一度考えていただきたいことがあります。冷たい物を飲み食いするということです。ヨガでは体温調節のことを非常に大切にします。それぞれのアサナの効用も体温調節の面から多く説明されます。ところが、これはなかなか難しくて、私もまだまだよく習得していませんので、うまく説明できません。それに、ヨガはインド(暑い国)のものですから、温度調整に関してはちょっと相容れないところがあるのです。
こういう点に関しては中国医学系の先生の教えの方が、日本人にはぴったりすると思います。私が気功の先生のお話を聞こうと努めているのは、こういう訳なのです。中国医学のほうでは、【冷え】ということを重大視します。それも、外からの冷えより中からの冷えの方が一層悪いと言う事なのです。先の例のように、体温をうんと上げたところで、冷たい物を大量に飲むなんてのは、冷えの面からも、体温調整の面からも最悪といえます。が、皆さんもこれに近い事をなさってはいないでしょうか?テニスなどをして汗をかいたあとできゅーっと飲むビールの旨さには、こたえられないものがあるのは、私もよーく知っていますが、それは本当はよくないんですよねえ。まあどっちを取るかはご自分で選択なさるしかないのですが、一応ご注意しておきます。そして、私の経験だけお話しておきましょう。
私が43歳ぐらいの時だったでしょうか。日本は高度経済成長の真っ只中でした。40歳から始めた塾も大体軌道に乗ってきて、好きなビールくらいは、けちらずに飲めるような経済状態に初めてなったのです。その頃、マンションの4階に住んでいて、ドアーや窓を開けておくと、いろんな物が飛んで行くほど風通しのいい住まいでした。又、その頃ミニスカート全盛で私たちのような中年の女性もミニをはいていたのです。膝上なんじゅうセンチものミニなのです。経済成長度とスカートの床上のセンチとは比例でもするのでしょうか?とにかくかなりのミニをみんながはいていました。
下から風の吹き上げるところで、ミニスカートで、ビールを浴びるほど飲んだのだからたまりません。秋風が立つとともに、髪の毛がごそごそ抜けてきたのです。まえにお話した鍼灸の四条先生に、「体が冷えきってる。冷たい物は一切禁止!」といわれました。私もまだ禿になるのは悲しい年齢でしたので、先生の言い付けどおり、冷たい物は一切止めました。それから40年くらい、室温以下のものは、一切口にしていません。難しいことのように思われるかも知れませんが、これも慣れの問題のようです。
今では、冷たい物を体に入れると、胃が「厭だ厭だ!」と言うのが聞こえるのです。ですから、私のお燗ビールは有名です。私の他にも、ヨガをかなりやっている人の中には、冷たい物は飲まないという人が、かなりいます。エアロビックスの先生で58歳で今でも現役でビンビンやっている方も、冷たい物は殆ど飲まないそうです。
さっきもいいましたように、冷たいビールの醍醐味は、よく理解できるのですが、体のことを考えるなら、少々お控えになった方がいいかと思います。特に運動の後など体温の上がっている時に急に冷やすのは良くないのです。これは勿論ビールに限らず、冷たいジュースなんかも同じ事です。あまり冷たい物を飲まないでも我慢しやすい季節から、気をつけることを始められてはいかがでしょう。
金魚鉢に水を足してやるのに、日向水を作ってやってから入れた経験の或る方は多いと思います。金魚の温度調整には、そんなに気を使うのに、ご自分の体の中には、バンバン冷たい物を放り込むというのは、、、、、、、、?
私はヨガの先生なんかしていますが、体に悪い事を、いっぱいしているのです。冷たい物を飲まないというのは、私の数少ない健康法の一つかも知れません。数少ない健康法の残りが何かということは、又その内にお話しましょう。
数少ない健康法しか持っていないのに、この程度に元気なのですから、少々耳を傾けていただいてもいいのじゃないかなあ、と思うわけです。
今日は乗っちゃって、少々長くなり過ぎました。ご静読(精読の間違いではありません。)ありがとうございました。
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〈筆〉waikari bahchan=木村詩世