「官能小説家」
ドクシャの苦悩と現実



「官能小説家」、まとめ読みをしました。 楽しいひとときでした。
「日本文学盛衰史」と「タカハシさんの生活と意見」を交ぜたような印象。
いちごポッキーとかプリクラとか菅直人とか、
現代日本のアイテムが次々に出て、親近感がわきます。

夏目漱石や、森鴎外や、作家タカハシさんや、編集者が登場し、
自らのあり方についていろいろ考え続けています。

これは、
作家が小説を書くこと、作家が小説を発表すること、をめぐる小説だ、
ということになるのでしょうか。
「ゲージュツ小説」とは、いつもそうなのかもしれませんが。

しかし、じゃあ読者はそのときどんな位置にいればいいのだろう。
私の方は、この新聞小説を読みながら、どんな現実に、どんな苦悩をすればよいのか。
見慣れないオリンピック競技に、
ルールも知らないまま、
まるで参戦しているつもりで、
不自然に熱狂しているのではないかという、
一抹の不安。

てなことを思いつきながら、
小説欄を読んだあと、ふと朝日新聞の記事に目をやると、
なんというか、新鮮でした。
どちらも同じ活字で出来ている。
そして記事の活字(とくに平仮名)が、まるで、小説の活字みたいに見えました。

近代日本小説について私はなにも知らないのですが、
ともあれ、その近代日本小説の総決算に立ち会っているのかもしれないという、
貴重な読書体験になることでしょう。
さあ、これからが楽しみだ。

その後の感想まとめ

Junky
2000.9.30

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