君が代は千代に八千代に
高橋源一郎・多作期について(1)
観測結果実況報告
「君が代は千代に八千代に」、連載の半分くらいは読みました。
ドタバタがそのつど糜爛、という印象で、
「官能小説家」の現代サイド(明治サイドでなく)に、だぶっていましたかね。
適当に筆を滑らせるからそうなるのか、
巧んできっちり発想・構成したからそうなるのか、
それは作者に聞いてみないと分からないのでしょうが、
ともあれ、
文学も社会も生活も含めた現在を観測した結果は正直こうなっちゃいました、
という捉え方が可能かとも思います。
しかもそれはまとまった報告文を読むというより、
実況を報告し報告されるという体験そのものをしている、
と、そんな読書感だったでしょうか。
(そういうことを言えば、
たとえばウェブの日記や掲示板はみな観測結果実況報告なのでしょうが)現在進行形っぽい文章ゆえに、
別の文章に置き換えること(論じるということ)が
最初から無化されているのかもしれなくて、
読む方は、とにかく読むことしかできないし、
でも逆に言えば、それさえすればいいわけで、
したがって、
読み終えたら雑誌を閉じてはいおしまい、ということにしておいて、
そういう読書は、ある意味、楽でした。ここしばらく、
新聞連載「官能小説家」と『日本文学盛衰史』があったし、
週刊朝日「退屈な読書」もあり、
おまけに結婚〜離婚の話にも気をとられ、
文学界の連載までは手が回らなかったというところもありますかね。