佐伯祐三の贋作騒動の騒動(1)

福井県武生市は、近代洋画家、佐伯祐三の絵画をある人物から寄贈され、改築した市の公会堂に展示し「佐伯美術館」とかいう名前でオープンさせる計画を進めてきた。ところが、この絵画は偽物ではないかとの疑惑が持ち上がり、 NHKのテレビ特番をふくめマスコミが全国に報道した。市の諮問委員会は11月13日「ニセの疑いが強い」という最終結論を出した。(新聞報道などによる)

武生市に提案があります。
佐伯祐三が描いた、かどうかが結局はっきりしない例の絵を、是非とも予定通り公会堂に展示すること。
ただしその場合、偉い画家だとお墨付きのある佐伯祐三が描いた、本物であるとの鑑定付きの作品を、ははあとありがたがって眺めに来るようなつまらない美術館にするのではありません。
美術とはなにか。本物の絵画とはなにか。こういう根本的な問いを真正面から投げかける美術館として名乗りをあげるのです。その材料としてこれ以上ぴったりのものはないと言えるたくさんの「有名」な絵画に図らずも恵まれたのですから。実現すれば日本で、もしかしたら世界でも初めての美術館が誕生します。おまけとして武生市が芸術というものに対しどういう態度をとってきたのか、あるいは情報公開ということをどう尊重してきたのかを反省する美術館としても意義を持つことでしょう。
僕は冷やかしで提案しているのではありません。真面目です。布団の中で新聞を読みながら本当にいいアイディアだ思ったので朝っぱらから書き込んでいるのです。
それにしても、くだんの絵画が本物か偽物かで日本近代美術史が書き換えられるかどうかの大変な騒ぎだそうで(いやあ、おめでたい)、また、武生市役所もぜんぜん別の意味で大変な騒ぎのようですが、その絵画そのものはいずれにしても全く同じものなのです。本物か偽物かで、それを鑑賞する僕たちの心にはどういう変化が生まれるのでしょう。そこがなにより面白いと思います。そして、たぶんそれが美術というものへのコンポンテキ的問いの始まりです。(この文章はパソコン通信「リンクリンク」に発言したものです。)

*この続きがあったので、追加しておきます。(2001.11)
佐伯祐三の贋作騒動の騒動(2)


Junky
1995.11.14

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