一番街

言葉の呪縛から逃れることができる場所としてひとつ思い当たるのは、夢です。思い出せそうで思い出せない種類のあるいは部分の夢です。たどろうとした途端ぼんやりしたり逃げたり。どうにもつかみきれない。これはそういう夢が言葉以外のもので出来ているからではないかと直感しています。
ただ悲しいのは、目が覚めてその夢をそのまま追想したり説明したりはできないように思えることです。内容を細かく語れば語るほど本当に夢みたこととどんどんずれていくように感じたことはありませんか。それは夢の世界の言葉ではない部分までが言葉として定着していくからからではないでしょうか。そこでは言葉以外のなにかから言葉への変換が起きているのです、たぶん。
では夢を物語りにではなく絵にしたらどうでしょう。僕は同じことだと思います。絵もなるほど言葉が描いてあるわけではないのですが、僕らが絵を認識し鑑賞するにも言葉の浸食は免れません。夢そのものが言葉と異質の成り立ちをしているとしたら、それは物語でないのと同様に絵と似ているけれど絵でもないのです。