じゃ生まれたての赤ちゃんはどうなんだ、との疑問が起こります。彼らは言葉を獲得していません。そのとき、たとえば肌に触れるお湯をどう思い、口に含むミルクをどう思っているのでしょう。「ぬるいな」「これが産湯というものか」「ミルクか」「母乳で育てないといい子に育たんぞ」なんて考えるはずはありませんね。だから赤ちゃんは少なくとも「考える」ということとは無縁だと思います。
確かに言葉で考えることはないだろう、しかし言葉にならないなにかを感じているはずだ。そういう人は多いです。僕もそういうこと自体を否定はしません。しかし、言葉にならないなにかは、あくまでも言葉ではありません。言葉を獲得した僕たちの「感じるという働き」と、言葉を獲得していない赤ちゃんの「あたかも感じるみたいにみえる働き」とは、決定的な隔たりがあると思うのです。