ともあれ、河原温の作品を見に行ってみた。
その日の日付をキャンバスに描くシリーズは1966年から断続的に続けられている。そのうち1970年3月だけは特別に毎日描いた。そして、今回の展示室の一つは、その1970年3月に描かれた作品だけ、つまり「MAR1.1970」から「MAR 31.1970」までの作品だけで埋め尽くされている。一日に複数を描くこともあったようで、たとえば「MAR 6.1970」は全く同じに見える作品が二枚並んでいる。
少なくともこの一室に限れば、説明はこれ以上要らない。想像できるような作品が想像できるように展示されている。もちろん、その作品がどういう大きさで、どういう色と質感なのかは見に行かなければわからない。しかし、それがこの作品の本質だろうか。また、河原温と作品の背景や意図に関する資料も会場で手に入る。しかし、それは家でも読める。
これだけで言えば「河原温は見に行かなくてもいい」となる。しかしそう急がず、もうちょっと考え続けることにする。結論持ち越し。
ただ実際の感想を言うと「河原温は途方もなく面白い」。実にいろいろなことを考えさせられた。このシリーズ以外にも、「私は10時14分に起きた」などとその日の起床時刻だけを記したハガキを毎日送り続けたシリーズなどもあるし。
ついでながら、もし、二つの「MAR 6.1970」が違う価格で売られていたなら、あなたは、どちらを買いますか。
¥3,000 | ¥450,000 |